*完全廃盤のため中古並(B)での入荷
(ケース・ブックレットに経年のイタミあり。盤にもスレがあるも再生には問題なし。流通量の大半がテープである、このタイトルにしては比較的珍しいCDです)
(中古盤の盤質については
「中古CDの盤質ランク基準」をご参照ください)
前作の巨大ヒット後、3年ぶりに出されたアルバム。
当時のタイの音楽シーンで3年ものインターヴァルを置いてアルバムを出していたシンガーは彼女以外にはいなく、それだけでもいかに彼女の存在が大きかったかがよくわかります。
クリスティーナ、マイ、マーシャといった(当時の)新人が全盛期を迎える中、ナンティダーは彼女達との立ち位置の違いを認識し、大人のファン層に確実に応える形でそのような流れに答えを出そうとしていたのかもしれません。
結果として出された本作はナンティダーの歌手としてのいろいろな魅力が詰まっており、またまた非常に良く売れました。
ナンティダーの歌声を前面に出し、アコースティックな味わいを出した1は特に白眉。ピアノだけの伴奏で始まり、サックス→シンセと徐々に音が厚くなる形でのドラマチックな編曲は静かな感動を誘う構成。近年ではベスト盤などから割と漏れていることも多いですが、間違いなく彼女の代表曲の1つ。
この曲に代表されるようにディテールにまで徹底してこだわり、1枚を通してのまとまりもしっかりしている作品です。
ただ、この中で最大のヒットを記録したのは、どことなくWhitneyの"Saving My Love For You"に似た曲調の5、そのせいか彼女のソングスタイリスト的な側面が強調される嫌いのある作品でもあります(Whitneyの場合も、"Saving.."の大ヒットのせいで初期はかなりその資質を誤解された)。得てして歌唱力の乏しいシンガーが多い(と言ったら失礼か)、凡百のソングスタイリストとは一線を画した実力派の彼女のこと、同じ"ソングスタイリスト的傾向"といっても、やはりレベルが違いすぎます。
タイはバラード天国ともいえるほど、バラードのヒットも多く、独特のおおらかな風土のせいか、独特のゆる〜い暖かさをもったシンガーが多いことが、その音楽シーンの大きな特徴となっています。
彼女もその例にもれず、しっかりその伝統を踏襲したシンガーの一人です。
ただ、この作品での彼女は、その"ゆる暖かさ"とも言える中にも一種のはっとさせるクールな瞬間をも感じさせる、タイポップスの中でも異彩を放っている作品です。
その後の彼女の曲にもそういうクールさを表したものがありますが、この作品は時にそのクールさが殺気にすら感じられる、そのピークともいえる傑作です。
The Theater